2011年01月29日 毎日新聞朝刊より
日本郵便改善策

人件費減 具体案示せず
「経営ミスで赤字」労組反発強く
 宅配便「ゆうパック」事業の不振で大幅赤字に陥った日本郵政グループの郵便事業

会社(日本郵便)が28日発表した収支改善策は、黒字化には避けて通れない人件費の

削減への言及を避けるなど具体性を欠く内容になった。同社は今後、労働組合と賃金

の見直しを協議する方針だが、経営判断のミスや政治状況が赤字の一因になっている

ため、労組の反籍は必至。業績立て直しの道筋は見えないままだ

 「組合との(賃金見直し)交渉はできる限りのことをやってグループ各社の支援を

得たうえででの、最後の手段」。総務省に収支改善策を提出した日本郵便幹部は慎重

に述べた。

 同社は非正規雇用を含めて26万人の従業員を抱え人件費は約1兆1000億円と営業費

用の7割近くを占める。亀井静香前金融・郵政担当相の要請で、昨年12月に非正規社

員6500人を正社員化したことも重しになっている。

 持ち株会社、日本郵政の斎藤次郎社長は年初の記者会見で「人件費の合理化が一番

の問題。組合にも協力をお願いし、抜本的な対策を講じなければならない」と述べ、

ボーナスや給与の削減も検訂する考えを示した。

 これに対し、組合は「宅配便の赤字は経営判断のミスが原因で、賃金カットは責任

を現場に押しっけるもの」と反発する。

 さらに郵政改革法案も、継続審議となった通常国会でも成立のメドは立たず、金融

事業の拡大でグループ力を高める戦略も宙に浮いたまま。業績不振は、経営判断や政

治状況が招いた面が色濃く、経営側も現場社員の協力を得るため低姿勢にならざるを

得ない。

 同社は10年9月中間期に928億円の営業赤字を計上。昨年7月の日本通運の「ペ

リカン便」とゆうパックの統合コストが増加したことや、統合直後の遅配問題への対

応で、年度当初の予想より赤字幅が285億円拡大。11年3月期は1050億円の営業赤

字に陥る見通しだ。

 報告書では、現状のままだと、来年度以降も宅配便事業が約1000億円の営業赤字に

なり、郵便引受数の減少でも年約500億円ずつ減収になる可能性があるとした。

 このため、宅配便については、負担が大きい「翌日午前中指定」の配達サービスを

やめる一方、郵便集配網を活用した当日宅配などを強化し、5年程度で黒字化を目指

す。郵便と宅配便を同じトラックで集配するなどの輸送の合理化も急ぐ。

 しかし、具体的な計画や収支改善幅の見積もりはなく、成長の展望は示せていない

。報告書でも「(13年3月期に黒字化の)目標達成に向けてなお不足が見込まれる
」と認める。結局は、社員に人件費削減への協力を求めるための地ならしの意味合い

が強い。【乾連、中井正裕】

         ■日本郵便の経営改善策

<対策>

・成果主義を反映した給与体系の導入を検討
・ボーナスや給与カットを検討
・郵便物とゆうパックを同じトラックで運ぶ
ことで運 送効率を上げる
・統合時に増えた非正規社員を減らしたり、
 配置転換したりする
・大口顧客との取引条件を見直す

<今後の見通し>

・2012年度に日本郵便全体で営業黒字を目指
 す
・5年程度でゆうパック事業を単年度黒字に
 
2011年01月29日 毎日新聞朝刊より 
13年3月期に黒字化 

日本郵便成果主義移行を検討
 10年9月中間決算で大幅な赤字を計上した日本郵政グループの郵便事業会社(日本

郵便)は28日、総務省に収支改善策を報告した。赤字の主因となった宅配便「ゆうパ

ック」事業の合理化や、成果主義の給与体系への移行検討などが柱。11年3月期に1

050億円の営業赤字を予想しているが、13年3月期の黒字化を目指すとした。  

同社は、現在の人件費負担を続けたままでは黒字化は難しいとしたが、賃金カットな

どは労働阻合との交渉が必要なため明記せず、人事・給与面の措置について「引き続

き検討を行っている」とするにとどめた。

 年間約1000億円の営業損失を出している宅配便事業については、運送ルートや従業

員の配置の見直しなどで、正社員の残業代や契約社員数を削減。郵便局会社などグル

ープ他社と営業面の連携を強め、今後5年程度で黒字化を目指す。郵便事業では、郵

便物引受数の減少で毎年約500億円の収入減が見込まれるが、機械化などの合理化

を進め、収益改善を図るとした。
 
 日本郵便は日本通運の「ペリカン便」と宅配便事業を統合した直後の昨年7月、遅

配問題が発生し、10年9月中間期に928億円の営業赤字を計上した。

                             【乾達、中井正裕】
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