2011年08月01日 北海道新聞朝刊より
国会会期末まで1カ月

宙に浮く郵政改革法案 

 衆院郵政改革特別委員会が13日、初めて開かれたが、委員会設置に反対する自民

党は委員名簿の提出を拒否、名簿提出済みの公明、共産、みんなの党の野党3党も運

営手法が不正常として欠席した。審議入りのめどは立たず、国民新党が求める今国会

 日本郵政グループなどが郵政改革法案の行方にやきもきしている。

今国会は震災対応などに焦点が当たり、同法案が審議されないままになっているから

だ。東日本大震災では現行の縦割り組織が原因で、被災者の要望に的確に対応できな

い弊害が続出した。組織の統合をうたう法案はその改善につながるものだが、見直し

を求める声の高まりとは裏腹に、中ぶらりんの状態が続く恐れが強い。

                          (東京報道 勝木晃之郎)

      被災地、縦割りの弊害随所に 関係者「復興に支障来す」

 「郵便事業会社や郵便局会社などが一つの組織になるか、別々の組織になるかによ

って建て直す局舎のレイアウトも変わる。だが、法案がはっきりしないとそれもでき

ず、復興に支障を来す」

 第2次補正予算が成立し、国会が終盤戦に差し掛かった7月末、郵便事業会社の鍋

倉真一社長がほかのグループ4社の社長とともに臨んだ会見で郵政改革法案の早期成

立を訴えた。今回の震災で東北の130近い局舎が全半壊したが、法案の行方が不透

明なために局舎の再建はほぼ手つかずの状態という。

 昨年4月と10月に閣議決定した法案は「小泉郵政改革」を見直すのが狙い。改革

により郵便、貯金、簡易保険の事業別に分社化され、各業務を請け負う郵便局会社が

設置された。この縦割りの弊害をなくすため現行5社体制を3社に再編し、ほ

かの金融機関との競争条件を等しくしようと現行1千万円の預入限度額を2千万円に

増やすことなどが柱だ。国民新党の案を民主党政権がほぼ丸のみした。

 鍋倉社長らによると、今回の震災では避難所を回っていた郵便局会社の職員が規定

で被災者に頼まれた郵便物を頚かれなかったり、津波でバイクを流された郵便事業会

社の職員が郵便局のバイクを借用できなかったりなど、別会社化の弊害が随所に表れ

たという。

 ただ、これを是正する法案の成立は見通せないままだ。国民新党の亀井静香代表の

要請で、菅直人首相が法案の薯議入りに前向きな姿勢を示したものの、今国会は子ど

も手当問題などの対応が優先され、8月末の会期末までに残された時間はわずか。供

に審議入りしても、自民党などが「郵政肥大化、民業圧迫につながる」と法案に批判

的なことから成立は厳しい情勢だ。

 近年郵便物や貯金の減少で減益を強いられる同グループは「学校や農協がなくても

、郵便局だけ残った地域は結構ある。そういうところにも局舎と人を置く全国均一の

サービスを続ける」 (古川こうじ治次・郵便局会社会長)と強調することで法案へ

の国民の理解を得ようと懸命。グループ外からも「弊害が震災であらわになったのだ

から、間違った部分を正してほしい」(日本消費者連盟の富山洋子代表運営委員)と

の声が漏れるが、このままなら過疎地の高齢者らの利便性に配慮した必要最低限の見

直しすらまともに議論されない恐れが強い
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