2012年01月13日 北海道新聞朝刊より
「ゆうメール」

     日本郵便は商標侵害

        東京地裁 DM使用差し止め命令 
 郵便事業会社(日本郵便)の配達サービス「ゆうメール」をめぐり、この名称を

先に商標登録した札幌のダイレクトメール(DM)発送業者が、商標権の侵害を訴

えた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。阿部正幸裁判長は業者側の請求を認め

、日本郵便にDMなど広告の配達について「ゆうメール」の使用差し止めを命じた

。判決が確定すればその部分について名称が使えなくなる。日本郵便側は控訴する

方針。

 札幌の業者勝訴

 訴えていたのは札幌市東区の札幌メールサービス。日本郵便は、配達しているの

は広告だけではなく、サービス内容はメール社と異なると主張したが、判決は「配

送の対象が商品カタログやパンフレットなどの場合は、原告のDM提供サービスと

ほぼ同一といえる」と指摘。名称自体も「外観や読み方、観念が同一」として「登

録商標と同じものを使っている」と結論付けた。

 日本郵便によると昨年度の「ゆうメール」の取扱量は26

億2千万個。DMの割合は不明だがメール社側は8割がD

Mとみており、判決が確定すれば影響は大きい。

 判決によると、メール社は2003年4月、「広告物の

各戸配布など」の分野の商標として「ゆうメール」を出願

し、04年6月に登録。一方、日本郵便(当時は日本郵政公

社)も04年4月に同分野で出願したが認められず、「鉄道

や車両による輸送など」の分野で岡11月に登録された。

 日本郵便はメール社の登録商標があることを知りながら、07年10月の郵政民営化

を機に「冊子小包」を「ゆうメール」に改称した。一方、メール社は日本郵便の事

業開始まで、この名称を使った事業を直接行っておらず、日本郵便は「不正目的で

、先取り的に商標を取得した」と反論していた。

 日本郵便のゆうメールは重さ3`以内の印刷物などが対象。1個当たりの最低料

金が65円と安価で、他の郵便事業が苦戦する中、販売が伸びている。 

日本郵便は反省を
 札幌メールサービスの代理人の話 日本郵便は明白な商標権侵害をしたうえ、調停、和解にも応じ
てこなかった。日本郵便はこれまでの態度を反省し、判決に従うことを強く求める。

控訴審の判断仰ぐ
 郵便事業会社広報室の話 当社の主張が認められなかったことは遺憾。控訴審の判断を仰ぎたい。
知的財産重視の原則従う

 <解説>日本郵便に「ゆうメール」の使用差し止めを命じた東京地裁判決は、名

称が広く認識されているサービスで公益性があっても、知的財産権の保護は重視さ

れるべきだとする商標法の原則に忠実に沿った判断だ。

 争点は日本郵便のサービスと、原告が商標登録した「広告の配達」という事業分

野が重なるかどうかだった。日本郵便側は別分野も含む事業と訴えたが、「カタロ

グなどの配送に適する」と宣伝していたことで、判決は広告の配達に利用できると

の認識があったと指摘した。

 また判決は日本郵便が登録商標を知りつつ使用に踏み切った認定。「確信的」な

権利侵害で、法令遵守の姿勢にも疑問を投げかけたと言える
                             (宇佐見祐治)
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