2012年04月25日 赤旗より
郵政3事業一体運営を

金融サービス切り捨て 山下氏が追及
 日本共産党の山下芳生議員は24日の参院総務委員会で、民自公3党が提出した郵政民営

化法改定案が、郵便局ネットワークを縮小させ、金融のユニバーサル(全国一律)サービ

スの確保も担保できなくなると追及しました。

 同案は郵便局の定義を変更し、郵便・郵貯・保険の3事業を一体的に提供していなけれ

ば郵便局から外れることになっています。山下氏は「郵便局の設宥義務の対象となる範囲

を狭め、郵便局ネットワークを縮小しかねない」と批判。過疎地にある簡易郵便局(19

45局)の9割が保険募集を行っていないことをあげ、「ほとんどが設置義務の対象でな

くなる」と指摘しました。

 川端達夫総務相は「法律上は対象から外れる」としつつも、「総務省令で3事業を行っ

ていない簡易局も(設置義務の)対象に規定する」と答弁しました。

 さらに山下氏は、日本郵政が保有する金融2社の株式を完全処分すればサービス後退阻

止に必要な議決権がなくなり、郵便局会社に支払っていた業務委託料1兆円も失われると

して、「経営が成り立つのか」とただしました。

 法案提案者の山花郁夫氏(民主党)は「総務省が郵便事業は3300億円の赤字になる

と試算している」と認めました。山下氏は「金融ユニバーサルサービスを担保する何の保

証もない」と述べ、3事業一体の運営でこそサービスを確保できると強調しました。
 民営・分社化経営も圧迫

郵政民営化法改定案参院委で参考人
 参院総務委員会で24日、郵政民営化法改定案の参考人質疑が行われました。

 郵政産業労働組合の廣岡元穂委員長は、「民営化で利便性を後退させ、生活基盤に打撃

を与えた」と指摘。改定案では郵貯銀行と簡保生命に金融のユニバーサル(全国一律)サ

ービスの義務付けがなく、郵便局ネットワークが壊され、サービスが提供できなくなると

して、「3事業一体経営、公益目的の経営体とすべきだ」とのべました。

 東洋大学の石井晴夫教授は「郵便、貯金、保険のどれが欠けても郵便局ネットワークは

維持できない」と強調。これに対し、生金保険協会の筒井義信会長は「全株売却の期限を

示してほしい」とのべ完全民営化を求めました。

 日本共産党の山下芳生議員は、金融2社の全株を処分し、完全民営化を目指しているこ

とに言及。廣岡氏は「ユニバーサルサービスを保障する根拠が失われ、利用者が被害を受

ける」と答えました。

 山下氏が3事業一体で運営していたときはサービスも確保され、経営上も合理的だった

と指摘。廣岡氏は「民営・分社化で経営が圧迫されユニバーサルサービスのコストが出せ

なくなった」と強調しました。

 また、筒井氏が政府出資・保証は「脅威」だとのべたのに対し、山下氏は「貯金や保険

は、利用者にとって安心・信頼の制度をつくることが大事だ」と主張しました。、

 参院総務委あす採決へ

 参院総務委員会は24日の理事懇談会で、郵政民営化法改定案を26日に採決することを決

めました。
 

 参院総務委での参考人質疑

郵産労・廣岡委員長の発言
    参院総務委員会の参考人質疑(24日)で 陳述した郵政産業労働組合の
    廣岡元穂委員長の発言は次の通りです。
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 国民共有の財産である郵便局ネットワークと金融と通信のユニバーサルサービスを守る

立場から意見を述べます。

 郵政民営・分社化によるサービス低下などの弊害をただちに改善し、3事業の一体経営

を行い、利潤追求ではなく公益を目的とした経営とすること、そのためにも、株式売却を

行わないことです。

 2005年に成立した郵政民営化法では付帯決議で、郵政事業を国民の貴重な財産であ

ると規定し、郵便局ネットワークが維持されるとともに、郵便局において郵便のほか、貯

金、保険のサービスが確実に提供されることなどを義務づけました。

 しかし、2007年の民営・分社化の結果、簡易郵便局の閉鎖、郵貯ATMや郵便ポス

トの撤去などサービスが大きく後退しています。東日本大震災では、仮設住宅にポストが

設置されていないなど、さらに問題点が浮き彫りとなっています。

生活基盤に打撃

 郵政事業をより企業的経営へと変質させ、郵便局ネットワークと生活インフラを破壊し

、被災地や過疎地、離島の住民生活の利便性を後退させ、高齢者をはじめ国民の安定した

生活基盤そのものに打撃を与えています。

 今回の法案は、貯金、保険の金融2社にユニバーサルサービス義務を課していないだけ

でなく、全株式の処分をめざすとしています。

 これでは金融2社は、利潤第一、もうけ本位の金融機関となってしまい安定的な金融サ

ービスを提供できなくなる恐れがあります。
 
 採算性を重視し利潤を追求する民間金融機関はすでに、2000年から2010年の10

年間で9786店舗減らしています。

 第二に、社会・地域貢献基金の廃止です。

 金融2社が完全民営化となった場合、過疎地の郵便局から撤退することは避けられませ

ん。郵便ネットワーク確保のため設けられた社会・地域責献基金が廃止されることにより

、過疎地の郵便局を守る財源の根拠が失われてしまいます。

 第三に、郵便局を「郵便窓口業務、銀行窓口業務、保険窓口業務を行うもの」としてい

ることです。これでは保険や貯金を扱っていない営業所は郵便局とはみなされなくなりま

す。

 公社時代には、国民生活に不可欠な基礎的金融サービスを保障するために、郵便局を全

国津々浦々に配置することが義務づけられていましたが、今回の改定案では、「郵便局」

の定義から外れた「営業所」を守る義務は法的根拠を失うことになります。

非正規20万人超

 第四は、労働環境の整備の問題です。

 日本郵政グループには20万人を超える非正規労働者が働いていますが、その多くは正社

員と同じように基幹的な業務を担いながら、平均給与では正社員の3分の1、諸休暇や手

当等待遇面での格差が存在しています。こうした雇用実態について、郵政改革素案は、「

社員のモチベーションや安定的なサービス提供の面で問題となっている」と指摘し、「安

定した雇用の中で社員が適切に業務を遂行する環境をつくること」を求めていました。し

かし、この郵政改革の理念が今回の改定案からはなくなり、非正規社員のモチベーション

が低下せざるをえません。
 
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