2012年10月01日 北海道新聞朝刊より
日本郵便きょう誕生
サービス向上 限定的

 日本郵政グループの経営体制を見直す改正郵政民営化法の施行に伴い、郵便事業会社と

郵便局会社が1日に合併し「日本郵便」が誕生する。2007年の分社化で生じた縦割り

の弊害が取り除かれサービス向上が期待される。しかし目に見える変化は当面少ないとみ

られ、合併で各事業の採算が不透明になり、かつて批判された「井勘定」が復活するとの

懸念の声もある。

「どんぶり勘定」復活懸念も

 山梨県北東部、人口約650人の丹波山村。山あいの集落にある丹波山郵便局では、合

併により、配達員がゆうちょ銀行の利用者から通帳を預かり、担当者に引き継いで貯金引

き下ろしを代行するサービスが可能になった。

「代行業」可能に

 分社化で郵便事業と金融事業とが分けられる以前は、こうしたサービスは「総合担務」

と呼ばれて高齢者らに重宝がられた。丹波山居でも「1カ月に10件前後の利用があった」

と、同局に16年間勤務する落合陸局長(40)は説明する。

 サービス復活に当たってちらしを村の各戸に配った。ちらしへの反応は今のところない

が「徐々に浸透させたい」と落合局長は言う。

 合併に伴うもう一つの変化は、同じ郵便局内で別々だった窓口の一本化だ。

 不在郵便物の受け取りは郵便事業会社の、郵便物差し出しや切手購入などは郵便局会社

の窓口がそれぞれ担当していたが、今後は統一される。利用者は局内でまごつく心配が減

りそうだ。

実施わずか52局

 だが両サービスとも、当面はそれぞれ全国52局での実施にとどまり、大半の利用者には

無関係。道内では宗谷管内猿払村の鬼志別郵便局だけだ。通帳預かりについて、ある労組

幹部は「需要は限られている。そう増えないだろう」とみる。

 逆に、合併が経営効率化の阻害要因になるとの指摘もある。

 電子メール普及などで郵便の取り扱いが減る郵便事業会社は厳しい経営が続いているが

、利益の出ている郵便局会社と一体になることで、損失が穴埋めされるという懸念がある

 日本総合研究所の湯元健治副理事長は「井勘定では、(グループを支えている)ゆうち

ょ銀で利益が上がらなくなったときに大変なことになる」と、会計の透明性確保が新会社

の課題だと訴えている。
 
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