2013年04月12日 北海道新聞朝刊より
改正民営化法成立から1年

郵政新事業足踏み

住宅ローン 学資保険 認可見通し立たず
  日本郵政グループが新事業進出で身動きのとれない状態に陥っている。「小泉郵政改

革」を見直す改正郵政民営化法の成立から1年になるが、新たな収益源と頼む新商品は保

険金不払い問題が尾を引き、認められないまま。また政府が交渉入りを決めた環太平洋連

携協定(TPP)で、米国が新商品投入を問題視する恐れもあり、弱り目にたたり目の状

態だ。

                            (東京報道 勝木晃之郎)

収益底上げの柱

「お客さんの利便性向上のため、商品

を充実させるのが狙いなのですが…」

。日本郵政の金融子会社の一つ、ゆう

ちょ銀行の担当者は、住宅ローンなど

新規事業の開始時期がいまだに定まら

ない現状に声を落とす。

 小泉純一郎元首相の完全民営化路線

を見直す改正郵政民営化法が昨年4月

に成立したのを受け、日本郵政は昨年



10月、組織縦割りの弊害をなくすため、傘下で窓口業務を担う郵便局会社と、郵便物の集

配を行う郵便事業会社を統合。ゆうちょ銀行とかんば生命の金融2社で、法改正により可

能となった新規事業を収益底上げの柱と位置付けている。

不払い問題影響


 ただ、このうち4月の取り扱い開始を目指していたゆうちょ銀行の住宅ローンについて

は、金融庁から審査体制の強化を求められている。代理店として扱う握携銀行のローンを

徐々に自前商品に切り替える意向だが、開始時期は不透明。かんぽ生命も死亡保障額を下

げる代わりに保険料を安くした学資保険の新商品を4月に投入する予定だったが、昨年、

2007年秋の民営化後に既存商品で保険金の不払いが発覚し、金融庁の認可が下りない

ままだ。

       TPP米の出方を不安視

 こうした中、新たな足かせになりかねないのがTPP交渉だ。

 持ち株会社の日本郵政は法改正で、目標とする15年の株式上場後も、政府が株式の3分

の1超を保有できることになったが、政府関与を残した状態で新規事業に乗り出せば、米

国から「公正な競争ができない」と横やりが入る恐れがあるためだ。

 現に米通商代表部(USTR)は今年の貿易障壁報告書で、かんぽ生命の保険商品を

問題視。過去に同社は米国系保険会社が得意とする「がん保険」への参入を見送った経緯

もあるが、「TPP交渉では新規事業に新たな制約が課されないようにしてほしい」(か

んぽ生命)とかわすのが精いっぱい。米国の出方次第では新規事業の開始がさらに遅れる

懸念もある。
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