2013年07月27日 北海道新聞朝刊より
日本郵政 アフラックと提携拡大 
がん保険2万局で販売発表 
 日本郵政の西室泰三社長と米保険大手アメリカンファミリー

生命保険(アフラック)のダニエル・エイモス会長兼最高経営

責任者は26日、東京都内で記者会見し、業務提携を拡大すると

正式発表した。今秋から順次、アフラックのがん保険を取り扱

う郵便局を現在の千カ所から全国約2万局に拡大する方針。ア

フラックは、日本郵政が独占的に扱える専用のがん保険の開発

する。                 (関連記事2面)

 環太平洋連携協定(TPP)交渉の事前交渉で、米国は日本

郵政傘下のかんぽ生命保険の事業拡大に反対している。政府は全額出資している日本郵政

の握携拡大により、障害を載り除く狙いもあるとみられる。会見に同席したアフラック日

本支社のチャ」ルズ・レイク会長は「(TPP交渉にも)良い影響があるのではないか」

と語った。

 日本郵政は傘下にある日本郵便の、計約2万4千の郵便局の大半でアフラックのがん保

険を取り扱うことになるほか、かんぽ生命79の直営店全てでも扱う。今後、日本郵政向け

のがん保険が開発されれば、両社で展開する。

 郵政、アフラックと提携拡大
 独自保険に米国の壁  TPPにらみ現実路線
 
 日本郵政と米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフ

ラック)との提携拡大が26日、正式発表された。郵政傘下のか

んば生命保険は独自のがん保険の開発・販売による経営のてこ

入れを目指してきたが、同社の事業拡大に反対する米国の厚い

壁は崩せなかった。環太平洋連携協定(TPP)交渉も絡み情

勢は厳しく、日本郵政グループは株式上場に向け次善の策に望

みを託した。                (1面参照)

 「日本郵政は2015年に株式上場を目指しており、そのた

めに最も必要なのは経営のスピードだ」。日本郵政の西室泰三

社長は会見でこう強調した。政府の郵政民営化委員会の委員長から日本郵政社長に転じて

わずか1カ月。言葉通りのスピード決着で提携合意にこぎ着けた。

 背景には、かんぽ生命が独自のがん保険を政府に申請しても、認可の見通しが立たない

ことがある。米国の中でも保険業界は強い政治力を持ち、米通商代表部(USTR)にも

影響力がある。この強敵を相手に、15年春を目指す上場を控えていつまでも足踏み状態を

続ける時間的余裕はない。

 日本郵政幹部は「自前のがん保険に固執するより、アフラックの商品を売って手数料を

得たほうが収益向上を見込めると判断した」と話す。米国への配慮を示すことで、かんぽ

生命が申請している学資保険の新商品をいっこうに認可しようとしない政府の対応の軟化

も期待できる。総務省幹部は「これが現実的判断だ」とうなずいて見せた。

 東京都内の帝国ホテルで行われた会見では、壇上に西室社長やアフラック米本社のダニ

エル・エイモス会長兼最高経営責任者ら6人がずらりと並んだ。折しも、マレーシアでの

TPP交渉会合の閉幕翌日という絶妙のタイミング。「大々的に協調をアピールするセレ

モニー」(政府関係者)となった。

 今後の日米交渉の地ならしになるかとの問いに、西室社長は「民間企業同士の話であり

直接関係はないと話す。ただ、「結果的にそういうことがあるかもしれない」と期待もの

ぞかせる。

 これまで「かんぽ生命の業務拡大阻止」で共同歩調を取ってきた国内生命保険各社にと

っては、今回の提携はアフラックに出し抜かれた形となる。

 がん保険でアフラックは日本市場の約7割の圧倒的シェアを握るが、全国2万の郵便局

が販売窓口となり、さらに強大な存在となって立ちはだかる恐れがある。

 アフラックのエイモス会長は「当社は日本で個人保険の保有契約件数ナンバーワンの生

命保険会社。日本郵政は日本で最も信頼さている会社の一つであり、最高の商品を提供す

る良い組み合わせだ」と胸を張った。

 対照的に、国内生保関係者の顔色はさえない。特に、日本生命保険は08年からかんぽ生

命と提携関係にあり、共同で開発してきたがん保険もほぼ完成していたが、結局、お蔵入

りになった。今回の提携拡大に、同社幹部は「いろんな思いはある」と複雑な表情をのぞ

かせた。
 
記者会見を終え、記念撮影に応じるアフラックのダニエル・工イモス
会長兼塁局経営責任者(左から3人目)、日本郵政の西室泰三社長(
同4人目)ら=26日午後、東京都内のホテル
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